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 まずハワードは風景描写の緻密な作家です。文章を追うにつれ、私の想像力以上に神秘的で荒涼としたファンタジーの世界が立ち上ってきます。

 剣と戦斧の轟きが死滅し、殺戮の叫喚が途絶え、血に染まった雪原を沈黙が支配した。蒼ざめた太陽の投げかける冷たい光が、氷の曠野ち雪に覆われた平地を荒涼と照らし出し、戦死者たちの胴鎧と折れた刀身から、銀色の光彩を反射している。戦死した勇者たちの手は、折れた剣の欛握ったままで硬直し、末期の苦悶に冑をかぶった頭をのけぞらせ、赤色あるいは金色の顎髭を天空に向けている。それはちょうど、彼ら戦闘種族の守護神、霜と氷の巨人イミルに、最後の祈りを捧げているかに見えた。(『氷神の娘』より、新訂版コナン全集1 黒い海岸の女王、ロバート・E・ハワード著、宇野利泰・中村融 訳)

 あるいは猥雑な都市の一角も詳細に描かれ、自分がその場に立って見ているような臨場感があります。

  盗賊の巣食う大槌横町には、たいまつの光がほのかに揺れていた。(中略)敷石も敷かず、曲がりくねってつづく町筋のそこかしこに、がらくたの山が堆く積み上げてあり、水たまりが鈍く光り、酔漢の群れがどら声を張り上げながら横行闊歩している。(「像の塔」以下前の引用と同じ)

 文章で劇場版ロード・オブ・ザ・リング並のイメージを喚起するのには驚かされます。

 本の帯には「すべてのヒロイック・ファンタジーの原点」とあるのですが、読んでみると意外に特殊な世界観です ・x・;
 たとえば、この世界では善と悪(またはそれに類する2大陣営)が対立しておらず、コナンは正義の味方ではありません。コナンは傭兵、海賊、泥棒を生業として、どちらかといえばアンチヒーローであって、冒険の切っ掛けはお金や女性目当てが多いです。彼に敵対する人物や集団、国家も銘々勝手な理由で行動しています。
 また、継続して登場するキャラクターがコナンだけというのも独特です。彼は孤独なヒーローなのです。
 こうしたシリーズの特徴が、コナンが独力で怪異に立ち向かう、このシリーズの魅力に繋がっているとおもいます。

 おすすめのシリーズなのですが、少々難点を挙げるとストーリーがワンパターンです。ほぼ毎回「さらわれた女性の救出クエスト」なのはどうにかならなかったのでしょうか… ・x・;
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2009.05.04 


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